佐々木暁彦先生近況報告(S63卒)2024.05.29
昭和63年(1988年)卒の佐々木暁彦です。2000年まで12年間循環器内科医局でお世話になり、その後中野区で父の跡を継ぎ開業致しましたが、開業して20年目の2020年2月に57歳目前でクリニックを閉院し、アーリーリタイア致しました。
リタイア後の収入は実家であるクリニックをマンションに建て替えての家賃収入の不労所得のみで、医療とは完全に縁を切った生活をしております。
リタイアの経緯やリタイア後の生活などに興味を持たれる先生方もいるかと思い筆を取りました。
個人的には2008年に当時43歳の妻を癌で亡くし、その前後に両親も死去。それからは文字通り男手一つで当時10歳と13歳の子供二人を育ててきました。
しかし、家庭と仕事の両立で疲れ切ってしまった事、クリニックの建物自体の老朽化、診療のストレスなど複数の要因があり、子供たちが二人とも無事就職し社会人になったのを機に閉院しリタイアすることにしました。
クレーマー気味の初診患者が増えてきたのに嫌気が差して臨床を離れたくなったのも要因の一つではあります。
信頼関係ができているかかりつけ患者さんの今後が心配でしたが、信頼できる近隣のドクター数人が快く引き受けてくれて最後の一人まで紹介状を書き引き継ぐ事ができました。
リタイアの準備はコロナ禍前の2019年からしていたので、閉院とコロナ禍とは関係ありません。
臨床医療には未練はないので、閉院に伴い全ての学会を退会したので、習得していた内科総合専門医、循環器専門医の資格も放棄することになりましたが全く悔いはありません。今後臨床医療に携わるつもりもありません。
前述の通り現在は扶養家族が一人もいない独り身なので収入の面は全く心配なく生活できています。
今流行りのFIRE(Financial Independence, Retire Early)ということになるでしょうか。
リタイア後の生活はやることがなく退屈なのではないかと思われる方も多いかと思いますが、4年経ちましたが私の場合は全くそのようなことはありません。
まず、視野を広げるために医学以外の分野の勉強をして資格をいくつか取りました。
ファイナンシャルプランナー2級、情報処理技術者試験(ITパスポート)、色彩検定2級などです。
ファイナンシャルプランナーとITパスポートは国家資格です。
自分の子供と同年代の若い受験者に混じって試験を受ける経験はなかなか新鮮でした。
医学以外の畑違いの分野の勉強はとても興味深く、学びは最高の娯楽だと思います。
ファイナンシャルプランナーは税金、保険、資産運用、不動産、相続などの知識が得られて実生活で役立つので、ある程度の知識は高校の必修科目にしてもいいように感じました。
投資の勉強もしていますが、結局よく言われているようにインデックスファンドの長期・積立投資が堅実だなと思います。
色彩検定は色に関する幅広い知識や技能を問う検定試験です。デザインに関する職業の方が取る資格ですが、興味があるので勉強しました。実生活では役に立たないかなとも思いましたが、図らずも自宅の外壁塗装の際の色選びにとても役立ちました。
ITパスポートは企業で仕事をするために必要最低限のIT知識が身に付きますが、今のところ実生活では役に立っていません。
大谷翔平選手の大ファンなので、シーズン中は毎日ドジャースの試合観戦をしています。大谷選手の活躍のおかげでNHK BSがドジャース戦を午前中に放映してくれるので試合のある日は毎日観戦です。これもリタイア生活の特権ですね。ユニホームや限定品の球場配布のボブルヘッド人形(ヤフオクで手に入れます)など大谷翔平グッズもだいぶ集まりました。推しのいる生活はなかなか良いものです。
最近ハマっているものはCOIASという未発見の小惑星探索プロジェクトです。ハワイにある世界最大級の“すばる望遠鏡”の画像データを用いて小惑星をはじめとする未発見の天体の探索を研究者と一般市民が協力して行っています。
自分のパソコン上で COIASのHPにアクセス、ログインすれば探索測定と専門機関への報告を簡単に行うことができます。私自身も10000個以上の天体を測定して小惑星の軌道を管理する国際的な機関であるMinor Planet Centerに観測データを報告しました。
複数日以上で追観測に成功した天体はMinor Planet Centerから仮符号を付与され測定者が機関誌に公表されますが、仮符号を得るのがなかなか難しいことなんです。
私は10000個以上の天体を測定しても仮符号を得たのは4個のみです。それなので国際的な機関誌に自分の氏名が測定者として掲載されると海外の学会誌に論文がアクセプトされたのと同じような喜びを覚えます。
私のような天文学の素人が自宅に居ながらにして天文学の進歩に寄与できるのですから、非常に興味深く面白いプロジェクトだと思います。
私は基本はインドア派なのですが、月に1〜2回は“まいまい東京”が主催する東京の街歩きツアーに参加しています。多彩なガイドがそれぞれ専門のテーマで案内してくれます。月替わりで30程のコースが設定されていて、その中から行きたいコースを選びますが人気のコースは抽選です。
今までに参加したツアーは“銀座の現代建築巡り”、“狛江の古墳巡り”、“再開発が進むカオスな巨大ターミナル渋谷駅巡り”、“徳川家の超巨大菩提寺芝増上寺巡り”、“明治神宮での野鳥観察”、“国分寺崖線探索”などなどですが、ガイドの中にはブラタモリ出演の案内人の方もいて、専門家の解説には知的好奇心が満たされます。
そして何より元気をもらえるのが気の置けない友人たちとの食事会、飲み会です。コロナ禍が終わってからは、おいしくてオシャレなお店を見つけては月に2回のペースで気の合う友人たちと会っています。これは私にとって人生を楽しく過ごす重要な要素です。
その他、毎日の掃除、洗濯などの日常の家事に加え、以前からプラモデル作り、鉱物収集、ミニカー収集、写真撮影、映画、ドラマ鑑賞などの趣味もあり、毎日退屈することなく楽しく過ごしております。
診療が好きでそれが生きがいであるなら早期にリタイアする必要はないと思います。私は配偶者の死によって人生の儚さを実感したこともありますが、もし仕事が苦行だと感じるなら私のような生き方も選択肢の一つだと思います。皆さんの参考になれば幸いです。
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