新年度を迎えて

寒さの厳しかった3月も過ぎて、令和7年度がスタートとなりました。それぞれの職場においても若い新人を迎えて心機一転の気持ちだと思います。また、同門会の先生方におかれましても、過ごしやすい春の気候のもとでご活躍されていることでしょう。
さて、前回のご挨拶でも触れましたようにアメリカ合衆国の大統領にドナルド・トランプ氏が返り咲き、この第二次政権は猛スピードで内政・外交を変革しています。これが良い方向に向かえばいいのですが、自国の利益のみを第一とする政治スタイルは大変不評です。早々日本にも火の粉が降りかかってきて、自動車産業への高関税で大騒ぎとなっています。なぜ中国のように日本はもっと早い段階から準備しなかったのか、と残念な思いでいる先生方も多いのではないでしょうか? 一方、訳ありのようにトランプ氏を擁護する一部の日本人がいるのは残念です。イギリスの経済雑誌フィナンシャル・タイムズの首席コメンテイターであるマーティン・ウルフ氏は「トランプ政権は西側の敵になった。」と喝破しており、私達も肝に銘ずべきではないでしょうか。
トランプ問題は経済・外交だけに止まりません。私達が直接関係する学問の自由を抑制するという、これまでの欧米では考えられなかった暴挙にまで及んでいます。ロシア・中国が逆立ちしても敵わないのがアメリカの大学力です。ノーベル賞受賞者の数を見れば一目瞭然です。ところが、ハーバードなどの有力大学に対して、学生選抜・教職員採用をトランプ政権がコントロールできるようにと圧力をかけているのです。このような大学の強みを棄損する行為は国益とはならず、MEGA運動支持者のみが喜ぶ愚策です。これに対抗すべく有力大学も協力しているようであり、今後の進展を注目したいと思います。
以上のような出来事を取ってみても、私達は歴史的な大転換の中にあると思います。これまで日本はアメリカに大きく依存していましたが、アメリカはいつまでも同じではありません。日本も自立する必要があります。どのような国のかたちが良いのかは分かりませんが、過去の歴史を教科書で調べるのではなく、現在進行形の社会情勢をシッカリと視て把握する力が大切になっていると思うのです。
末筆となりましたが、陽春のなかでの先生方のご活躍をお祈り申し上げます。
東京医科大学循環器内科同門会会長
東京医科大学名誉教授
近森大志郎